月そのものは大きくなっていない
地平線近くの月は、空高くにある月より大きく見えます。これを月の錯視と呼びます。 けれども、月が目に映る大きさ(見かけの角度)は、昇ったばかりでも真上でもほぼ同じで、約 0.5 度です。 むしろ地平線の月は、地球の半径ぶんだけ観測者から遠いので、わずかに小さく映っています。
写真に撮ると差は出ません。同じ設定で、地平線の月と高く昇った月を撮って並べると、大きさはほとんど変わりません。 大きく見えているのは目の外ではなく、見た像から大きさを判断する脳の側です。
自分で確かめる方法
| 方法 | やること | 分かること |
|---|---|---|
| 5 円玉の穴で測る | 腕をまっすぐ伸ばして 5 円玉を持ち、穴から月をのぞく。地平線の月と、数時間後の高い月の両方で試す | どちらもおおよそ穴に収まる。映る大きさは変わらない |
| 筒を通して見る | 紙を丸めた筒で、月だけが見えるようにする | 周りの景色が消えると、大きく見える感じが弱まる |
| 写真を撮る | スマホのズームを同じ倍率に固定して、時間をおいて 2 回撮る | 画面の上での大きさは同じ |
| 頭を傾ける・逆さに見る | 首をかしげたり、前かがみになって脚の間から見たりする | 見え方が弱まると言う人が多い。個人差がある |
2 番目の方法がいちばん大事な手がかりです。地平線や建物が見えていることが、月を大きく見せていると考えられます。
なぜ大きく見えるのか — 主な説
月の錯視の原因は、今もひとつに決まっていません。有力な説は次のとおりで、いくつかが重なっていると考える研究者もいます。
| 説 | 考え方 | サイトで試せる図版 |
|---|---|---|
| 見かけの距離説 | 空を平たいドームのように感じ、地平線の方を遠いと見積もる。同じ大きさに映る物は、遠いほど大きいと判断される | ポンゾ錯視 |
| 周りとの比較説 | 地平線の月は、遠くの小さく見える木や建物と並ぶ。小さい物に囲まれると、中央の物は大きく見える | エビングハウス錯視 |
| 目の向き・姿勢の説 | 目を上げて見上げるか、まっすぐ前を見るかで、大きさの感じ方が変わる | — |
見かけの距離説は、ポンゾ錯視と同じ仕組みです。 ポンゾ錯視では、奥へ向かって狭まる 2 本の線が「遠さ」の手がかりになり、奥にある方の棒が長く見えます。 地平線までの地面や街並みが、同じ役目をしていると考えられます。
周りとの比較説は、エビングハウス錯視やデルブーフ錯視に近い考え方です。 何もない夜空の真ん中の月には、比べる相手がいません。
月が大きく見えるのは錯覚ですか?
はい。地平線近くの月が大きく見えるのは錯覚です。映る大きさはどの高さでもほぼ同じ約 0.5 度で、写真に撮っても差は出ません。 国立天文台も「目の錯覚によるものといわれています」としたうえで、なぜ起こるのかは「まだはっきりとした説明はついていません」と書いています。
スーパームーンの日に大きく見えるのも錯覚?
距離が近いぶん実際にも少し大きくなりますが、地平線で大きく見える分は錯覚です。2 つは別の現象です。
月と地球の距離は約 1 か月の周期で変わります。国立天文台によると、月までの距離から計算すると、最大の満月は最小の満月より直径で約 14%、面積で約 30% 大きいとされています(2016 年の比較)。これは目の外で実際に起きている違いです。 ただし国立天文台は、最大の満月でも夜空で見ただけで大きいと感じるのは「たいへん難しいと思われます」としています。並べて比べないと気づきにくい差です。
一方、同じ晩のうちに、昇ったばかりの月が空高くの月より大きく見えるのは、このページで書いてきた月の錯視です。国立天文台も、地平線近くの月を見て大きいと感じるのは、この錯覚による場合が「ほとんどだと思われます」と書いています。
なお「スーパームーン」は天文学の正式な用語ではなく、定義もはっきりしていません(国立天文台)。
よくある誤解
- 「空気がレンズになって拡大している」 — 違います。大気の屈折は、地平線の月を上下にわずかに押しつぶすだけで、大きくはしません。 夕日や昇る月が少し横長の楕円に見えるのはこのためです
- 「地平線の月は地球に近い」 — 違います。上で書いたとおり、わずかに遠くなります
- 「月の軌道の都合で大きい日がある」 — 実際に少し大きく見える日(いわゆるスーパームーン)はありますが、 一晩の中で地平線と空高くで大きさが変わる月の錯視とは別の話です(上の「スーパームーンの日に大きく見えるのも錯覚?」)
自由研究にするなら
- 5 円玉の方法で「映る大きさは同じ」を確かめる。これが出発点になる
- 条件を一つだけ変える。筒を通す・通さない、建物が見える場所・見えない場所
- 何人かに「どれくらい大きく見えるか」を聞いて記録する。感じ方には個人差がある
- 紙の上で似た現象を探す。ポンゾ錯視の図版で、同じ長さの棒が違って見えることを定規で確かめる


